税理士会政治献金事件~公益法人の行う政治献金は目的の範囲内か?~

憲法判例
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税理士会は税理士の強制加入団体だけど、その会費を公益法人である税理士会が政党に献金をしてもいいものなんですか?

今日は税理士会政治献金事件を取り上げます。前回株式会社という営利法人の政治献金は許されるのか?という判例を取り上げ、そちらは問題ないという結論でした。

前回の記事はこちらです。

八幡製鉄政治献金事件~法人の政治献金は許されるのか?~

今回の税理士会は公益法人です。税理士はこの税理士会に加入しないと税理士として業務ができないという、いわゆる強制加入団体といえます。

そんな公益法人が会員から集めた会費を政党に献金を行うことは違法ではないのか?というのが主な論点です。この辺りの論点を中心に説明していきます。

公益法人が政治献金を行うのは許されるのか?

簡単な結論

様々な思想を持つ会員から集めた会費を、強制加入の税理士会が献金に充てることは許されない。

事件の発端

ある税理士会が特定の政治団体に政治献金を行うことを決定し、特別会費として一人あたり5000円徴収することとした。

しかしこの決定に対してある会員はおかしいじゃないかと思い、訴えを起こすことになった。

判旨

  1. 税理士会が税理士に関わる政治的要求をするために献金を行うことは税理士会の目的の範囲外の行為である
  2. 税理士会は会社とは法的性格を異にする法人である
  3. 税理士会は強制加入団体であり、政治献金をすることが様々な思想、信条を有する会員の選挙における投票の自由と表裏を成すものである

税理士会政治献金事件のポイント

この判例でポイントとなるのは次の三点です。

  1. 税理士会が会員から集めた会費で政治献金を行うことは目的の範囲外である
  2. 税理士会は会社とは法的性格を異にする法人で、税理士の強制加入団体なので、たとえ多数決で政治献金を行う旨の決定をしたとしても無効である
  3. 会員には様々な思想、信条を有する者が存在することは当然予定されているので、政治献金をするかどうかは選挙における投票の自由と表裏を成すものである

税理士会は株式会社の株主と違って、強制加入団体であるので会員から集めた会費を政治献金に回すのは許されないということです。たとえ多数決などの手段で決定したとしてもです。

三つ目のポイントはどういうことか簡単に噛み砕いてみると、

例えばある会員が自分の大嫌いな政党に税理士会が献金をします、となったら不本意ですよね?強制徴収された自分の会費なのに。

ということです。かなり簡略化しましたが。

想定される出題例

·税理士会は、政治団体に税理士会に係る法令の制定等の政治的要求を実現する目的があれば政治献金をすることは許される。

·税理士会が強制加入団体とは言えど、多数決で献金を行うことと決定したのであれば政治献金は問題とならない。

·税理士会が政治献金を行うことで、各会員の持つ思想、信条に特段問題が出ることは想定していないため、政治献金を行うことは問題ない。

全て間違いの肢です。ポイントのところでも挙げましたが、改めて最も重要なのは、

税理士会は強制加入団体であり、会員に様々な思想があることも予定されているので、集めた会費を政治献金するのは許されない

最低このポイントは押さえましょう。

まとめ

今回は税理士会政治献金事件について説明してきました。とにかくポイントと出題例のところで挙げた部分だけを理解しておいて下さい。理解できればこの判例のミソは頭に自然に入るはずですので。

まだ行政書士試験において過去に出題例はありませんが、前回の営利法人の政治献金事件なんかとミックスして出題というパターンが考えられます。ですので今回の解説をよく読み込んでおくことをオススメします。

それでは引き続きがんばって下さい。

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