自衛隊員合祀訴訟~自己の信仰に反して夫が合祀されたのが許せない

憲法判例
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亡くなった人を護国神社に勝手に合祀するのは違法ですか?

勝手に合祀した行為は遺族の宗教的人格権を侵害する行為になりませんか?

  • 夫を勝手に合祀した自衛隊の行為は宗教活動にあたるのか?
  • 自身の信仰に反して祀られることのない自由(宗教的人格権)は認められるのか?

この二点に加えて大事な論点も交えながら、結論となぜそうなるのかというところに絞って説明していきます。

行政書士試験においては信教の自由の分野は狙われやすいところなのでこの判例もしっかり押さえておきましょう。

自衛隊員合祀訴訟について

最初に結論

自衛隊が亡くなった夫を護国神社に合祀した行為は宗教活動にはあたらない

妻の静謐な宗教的環境下で信仰生活を送るべき利益なるものは認められない

きっかけ

ある自衛隊員が殉職してしまった。彼の所属していた自衛隊地方連絡部は殉職した隊員を護国神社に合祀することを推進した。

しかし殉職した隊員の妻が、夫を護国神社に合祀する行為は自己の信仰に反するため反発した。妻は自衛隊地方連絡部の行為は政教分離原則に反し、また夫を自己の信仰に反して祀られることのない自由を侵害されたと主張し争われることになった。

判旨

  • 本件の殉職隊員を合祀する行為は宗教とのかかわり合いは間接的で、その目的も隊員の社会的地位の向上と士気の高揚を図ることであった
  • 国or機関として特定の宗教への援助等を行うものであると一般人から評価される行為とは認めがたい
  • 私人間で争いがある場合、場合によっては民法や不法行為等の規定の運用によって法的保護を図るべきである
  • 人が他者の宗教上の行為によって不快な状態になりたくないと望むことは、その心情として当然である
  • しかしその行為に対して直ちに損害賠償など法的救済を求めることができるとすると、かえって相手方の信教の自由を妨げる結果となってしまう

ポイント

押さえておいて欲しいポイントは3つあります。

  • 殉職隊員を祀る行為は特定の宗教を助長するなどの目的ではなく、隊員の士気の高揚などが目的である
  • 私人間の争いは間接適用説により、民法の規定で法的保護を図るべきである
  • 宗教上の感情に直ちに法的救済を認めると、相手方の信教の自由も妨げる結果となる

まず自衛隊の行った殉職した隊員を護国神社に祀る行為ですが、これは問題ないということです。たしかに護国神社というのは、なんとなく宗教的な匂いがしなくもないです。

しかし目的が宗教を援助するような意味はないというのはなんとなく納得できます。最高裁も問題ないとの判断です。

二つ目ですが、ここは憲法の私人間効力という知識が必要です。軽く説明します。この私人間効力というのは3つ考え方がありまして、

  1. 無適用説…憲法の人権規定は私人間への適用はない
  2. 直接適用説…憲法の人権規定は私人間にも直接適用される
  3. 間接適用説…憲法の人権規定は私人間には直接適用されないが、民法等を媒介して憲法の人権規定を適用する

そして最高裁はこの内の3番の間接適用説を採用しています。つまりもし、私人間間で信教の自由の侵害の程度が許容範囲を越えた場合は、

憲法20条によって違法である、とはならず民法1条や90条によって違法となる

というような結論になるんです。ちなみにこの裁判では被告側というのは国ではなく、地方連絡部といういわゆるOB会になります。ですので妻vsOB会という私人間間の争いになるわけです。

3つ目のポイントですが、最高裁は妻の宗教的心情に対して一定の理解は示しました。しかし一方で相手方の信教の自由とのバランスも大切にしなければならないということもいっています。要はバランスですよね。一方の言い分ばかり聞いては不公平だという司法の考えそのものです。

つまるところ、妻の訴えた、静謐な宗教的環境下で信仰生活を送るべき利益なるものは認められないという結論に至ったわけですね。

出題例

·自衛隊地方連絡部の行った殉職した隊員を護国神社に祀った行為は特定の宗教を助長する行為と認められるため、政教分離原則に違反する

·私人間間での争いにおいて、自由の侵害がその態様、程度が社会的許容を越える時は憲法の人権規定が適用されるのが通説である

·自己の信仰生活を他者の宗教上の行為で不快の感情を持った場合、その感情は被侵害利益として損害賠償を請求できる

どこが誤りなのか全てわかりましたか?特に気を付けるべきなのは間接適用説のところと、気持ちはわかるが信仰生活を静謐な環境下で送る自由は認められないというところでしょう。

今一度ポイントのところでしっかり理解しておきましょう。

まとめ

今回は信教の自由の分野より自衛隊員合祀訴訟について取り上げてきました。この判例はそこまで複雑ではないので結論とそこに至る理由だけ押さえて、サクッと進めていきましょう。

出題されるとすれば信教の自由全体で1つの問題として出題されて、その中の肢の1つとして出てくるかもしれません。

もし出題されればサクッと解いて正誤の判断ができるようにしておきましょう。引き続き学習を継続していって下さい。

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信教の自由の判例まとめ

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