地方公共団体である県が神社に対して玉串料を奉納するのは許されるんですか?
玉串料訴訟について
簡単に結論
県の行った玉串料の奉納は宗教的意義を持ち、たとえそれが戦没者の慰霊等が目的といえども憲法に違反する行為である。
きっかけ
愛媛県知事がある神社が挙行した例大祭に際して、玉串料を公金から支出した。このことを知った住民からこの県の行為が憲法20条3項に違反するのではないかという訴訟がおこされた。
判旨
- 玉串料は各神社が宗教的意義を有すると考えていると言える
- 県が奉納した神社以外の同様の儀式には玉串料を奉納していないことは、特定の宗教団体との間で意識的に関わりをもったことを否定できない
- 一般人の賽銭や香典とでは社会的意味が同一であるとはいえない
- たとえ目的が戦没者の慰霊等といっても宗教的意義を持つため、憲法違反である
ポイント
ここで挙げるポイントは2つあります。
- 玉串料の奉納は宗教的意義がある
- 香典や賽銭と玉串料の奉納は社会的意味が異なる
まず1つ目ですがこれはそのまま覚えましょう。玉串料の奉納はただのお参りなどとは違って、宗教的意義があるといっています。
2つ目が大事で、ここが狙われやすいところではあります。どういうことかというと、この裁判では被上告人側は玉串料の奉納は一般人が行う賽銭や香典と同様のものだろう?と主張しています。
ここでそれぞれの目的を整理してみます。
- 賽銭…一般人が願い事をするため、特に名前などを添えず匿名で行う
- 香典…一般人が故人に弔意を表するため遺族に送る
- 玉串料…重要な意義を有する宗教上の儀式に際して、戦没者の慰霊等を目的に神前に供える
それぞれの違いがわかりますでしょうか?まず賽銭と比べると、賽銭はただ賽銭箱に個人が好きな額を入れて終わりですよね?それに比べて玉串料は神前に備えると。明らかにお金の扱いが違いますね。
香典と比べてみます。どちらも故人への弔いが目的なのは一致してます。しかし香典は誰が最終的に受けとりますか?故人の遺族ですよね?
一方玉串料はどうでしょう。これは戦没者の遺族が最終的に受けとるんですかね?違いますね。神社が玉串料を受けとるんです。
だから最高裁は結論として、玉串料の奉納の目的が故人の慰霊等といえども、宗教的意義を持ち憲法に違反するという結論を出したんです。
出題例
·玉串料は神前に供えられるものにすぎないため、宗教的意義を有しないため、県の行った玉串料の奉納は違憲ではない
·玉串料の奉納は戦没者の慰霊や遺族の慰謝を目的としてされるものなので、宗教的活動には当たらないので、違憲ではない
·香典は故人に対する哀悼の意を表するために送られるものであるが、玉串料も戦没者の慰霊などの意義をもってなされるものであるから、その性質は同一といえる
以上3つの例を考えてみました。いずれも誤りですが、どこが違うのかわかりましたか?
もう一度整理すると、
この理由をしっかり覚えておきましょう。
まとめ
今回は玉串料訴訟について、県の行う神社への玉串料の奉納は許されるのか?というテーマで話してきました。何度も言いますがこの判例では結論に至るまでの理由が大事で狙われやすいです。
ですので今一度なぜその結論になるのか、というところを突き詰めてアウトプットをしてください。
本試験で出題されたらラッキーと思うくらいまで自分の中に落とし込めておいてくださいね。
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