剣道実技拒否事件~校長に処分の裁量権は認められるのか?

憲法判例
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剣道実技拒否事件ってどんな事件ですか?

わかりやすく教えてほしいです。

今回は剣道実技拒否事件についての解説です。

この判例は意外と押さえるべき要点や試験で問われるバリエーションがいくつかあるため、しっかり理解しておかないと足下をすくわれかねません。

実際に私もよく模試で引っ掛かった判例です。ですので今回は試験で狙われる部分にしぼって説明していきます。

剣道実技拒否事件って?

事件の背景

エホバの証人の信者である生徒Xはある市立の高専に通っていた。Xは必修科目である体育の剣道の実技を拒否した。というのも彼の信仰している宗教では、争うことをよしとしない絶対的平和主義の教義があったためである。

そのXの申し出に対して校長は退学処分を下した。Xはこれを不服として争うこととなった。

判決内容

  • Xへの処分の判断は、校長の合理的裁量に委ねられている。
  • 裁判所その判例の審査をする基準は、裁量権の逸脱があったときに限る
  • 学校において剣道実技が必須のものである必要はなく、代替措置でもいいのではないか
  • 本件の校長の判断は他の代替措置を検討することもなく行ったこと違法であるが、Xの信教の自由を侵害するとまでは判断できない
  • 公立学校で学生の信仰を調べあげ他の生徒と別段違う扱いをすることは認められないが、本件のような履修上の問題と宗教上の信条が被るときはその限りではない

剣道実技拒否事件のポイント

今回の剣道実技拒否事件のポイントは四点あります。それは、

  1. 校長の学生に対する処分の決定などは合理的な裁量の範囲内にあり、その裁量権の公使を必要以上に越えたときのみ裁判所の審査の対象となる
  2. 公立学校において剣道実技の必修は必須とは言えず、他の代替措置でも可能である
  3. 校長の行った退学措置は違法であるが、生徒の信教の自由を侵害するとまではいえない(生徒の信教の自由を侵害するとまでは判断していない)
  4. 生徒の主張する宗教上の信条と剣道実技を拒否することとの合理性が認められるのかを学校側が確認する程度のことは許される

以上の点です。

まず1つ目の校長の生徒に対する処分の決定は校長に裁量権があると裁判所が判断しています。つまり校長は極端に生徒を貶めてやろうなどと考えるなどでなければ、自分の判断で処分を下せるわけです。

また裁判所は校長の判断が社会通念上めちゃくちゃヒドイというもの以外は判断することもしないと言っています。裁判所は社会通念上の判断を基準に動くんです。校長と同一の立場で判断するわけではありません。ここは気を付けてください。

二つ目ですが剣道実技を必修科目にする必要性はないのでは?ということです。つまり単位を取らせようとするための手段は、例えばレポートの提出などでもいいのでは?ということです。

三つ目が生徒が受けた退学処分は校長の判断が裁量権の公使に逸脱があって違法であるといえる。しかし信教の自由を制約するとまではいえないということです。

四つ目が原則、学生の信仰を調べあげ、他の生徒と異なる取り扱いは許されない。しかし本件のような履修に影響が出る場合などが想定されるときは、確認するような形をとれば許されるとしています。

以上の四点になります。もちろん試験で問われるのは以上のポイント部分からとなります。次項で出題例を見てみましょう。

出題例

それでは具体的な問題の出され方を見てみましょう。

·裁判所が校長の出した退学処分を違法と判断する基準は、校長と同一の立場にたって判断すべきであると言える

·校長が剣道実技を拒否するとした生徒に対して、他の代替措置をとることにした場合他の生徒と異なる取り扱いをすることとなり違法である

·校長が出した退学処分は生徒の宗教上の信条を否定するものであり、生徒の信教の自由を侵害するものであり違法である

想定されるのは以上の3パターンからの切り口になるかと思います。過去問を見てみても以上のような聞き方が大半です。

もう一度整理すると、

  • 裁判所は校長の裁量的判断に社会通念上照らして、裁量権の逸脱があるときに初めて判断する立場にたつ
  • 原則他の生徒と違う扱いはダメだが、今回のような単位に影響が出る場合のような例外の時は特別に違法とはならない
  • 校長の下した退学処分は他の代替措置を検討することなく行ったもので違法であるものの、生徒の信教の自由を侵害するものとまでは判断できない

以上の論点は押さえておきましょう。ちなみに例題の答えは全てまちがいですよ。確認しておいてくださいね。

まとめ

さて今回は剣道実技拒否事件について説明して参りました。単純な判例ではあるんですが、押さえるべきポイントが複数あるため侮れない判例のうちの1つでしょう。

憲法だけでなく、行政法の行政裁量の部分でも問われますのでぜひこの機会に得意になっておきましょう。一石二鳥になります。

また自分なりに問題集で該当箇所を解いて、確実に知識として身に付けておくことをおすすめします。

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